障害物が表れたり消えたりする原理を司るデーヴァターとして、
インドの伝統ではものごとの始めに必ずガネーシャにお祈りします。
リシケシュのダヤーナンダ・アシュラムには、ガンガーダレーシュヴァラというシヴァの姿のひとつが祀られている寺院があり、その中にもガネーシャの祠があり、
そこにはこのようなお祈りの句(シュローカ)が刻まれています。
数あるガネーシャへのシュローカの中でも、このシュローカはそれほど一般的に知られているものではないように思います。
このシュローカは、クリプティック(暗号的)と呼ぶには大袈裟ですが、他の一般的なシュローカのように、見たまま・聞こえたままに解釈できるものではなく、ちょこっと考えなければならないように出来ているようです。面白そうなので、見て行きましょう。
यदालम्बो दरं हन्ति सतां प्रत्यूहसम्भवम् ।
तदालम्बे दयालम्वं
लम्बोदरपदाम्बुजम् ॥
yadālambo daraṃ hanti satāṃ pratyūhasambhavam |
tadālambe dayālamvaṃ lambodarapadāmbujam ||
始めの方から、ガネーシャの呼び名のひとつ、「लम्बोदर [lambodara] 」という名前が聞こえますが、これは引っ掛け(?)です。
ガネーシャは、お腹が大きく出ていることから、
長い(लम्ब [lamba])お腹(उदर [udara])を持つ者(लम्बम् उदरं यस्य सः )、
लम्बोदर [lambodara] という名前でも知られています。
このガネーシャの名前と似たような響きのする言葉が幾つか並んでいますね。
पदच्छेद [padaccheda] (連音の法則を解き、単語ごとに音を切ること)をして、
各単語の活用語尾を添えてみますね。
यद्-आलम्बः 1/1 दरम् 2/1 हन्ति III/1 सताम् 6/3 प्रत्यूहम्भवम् 2/1 ।
तत् 2/1 आलम्बे I/1 दयालम्वम् 2/1 लम्बोदरपदाम्बुजम् 2/1 ॥
英訳もしてみました。
यस्य आलम्बः आश्रयः यदालम्बः = The protection/support of which (the lotus feet of Gaṇeśa)
हन्ति = removes
दरम् = the fear
प्रत्यूह-सम्भवम् = which is born of obstacles
सताम् = of people who follow dharma.
आलम्बे = I take recourse to = आङ् + लम्ब् (1A) to resort to + लट्/कर्तरि/I/1
तत् = that
लम्बोदरपदाम्बुजम् = lotus feet of Gaṇeśa
दयालम्वम् = which is the abode of compassion.