2024年7月24日水曜日

名古屋での勉強会で話したことの振り返り

先日は、久々に名古屋を訪れ、ヴェーダーンタの導入となる一日クラスをしました。

名古屋にお招き下さったのは、コロナ以前に毎月名古屋市内で勉強会を開催してくださっていた方です。今回は、多くの人にヴェーダ、ヴェーダーンタの教えるヴィジョンを知るきっかけにと、『現代に必要な祈りについて』というタイトルで、名古屋駅近くのアクセスの良い会場で約50名の方々にお話できる機会を作ってくださいました。

タイトルだけを見ると、皆でとにかく神頼みしましょう!という会合のようにも見えなくはないですが、話の中身は100パーセント、ヴェーダーンタです。

参加された方々の大半は、ヴェーダーンタのお話を聞くのは初めての方でした。
初めてこのような話を聴く方々のお顔をみながら話していると、どうやって話そうか、という創意工夫意欲が刺激され、より活き活きとした話の展開となります。
プージヤ・スワミジはよく、初めての人に多く来て欲しい。ヴェーダーンタを聴いて、驚く顔が見たい。と仰っていました。自分が教える立場になってみて、そう仰っていたスワミジの言葉の意味がよく分かる気がします。
今までどれだけ自分が、そして全人類が、自分が本当は何を求めているのかも分からずに生きて来たという、驚愕の事実を知らされて驚かない人などいません。そして、人類の全てが求めている究極のゴールは、この宇宙一切合財の真実であり、そんなスケールの大きすぎる話の中心がこの自分であり、それが、自分が毎日使ってきた言語でコミュニケーション可能であると分かってしまったら、驚かずにはいられないはずです。
ヴェーダーンタの教えは、特殊な人の特殊な趣味として、特定のこぢんまりとしたグループの中に閉じ込められるべきではないのです。

前置きはここまでにして、ここからは、自分の為に、名古屋で話した話の流れを、まとめて行きますね。内容まで書くと一冊の本になってしまうので、ここではできるだけ、枠組みのみに留めたいと思います。

ガネーシャのお祈りから見えてくること

वक्रतुण्ड महाकाय सूर्यकोटिसमप्रभ । निर्विघ्नं कुरु मे देव सर्वकार्येषु सर्वदा ॥
vakratuṇḍa mahākāya sūryakoṭisamaprabha |
nirvighnaṃ kuru me deva sarvakāryeṣu sarvadā ||

・「お祈り」も「行い」なので、必ず結果を生む。
・ しかしそれは単なる呪文ではなく、文法的に解析し、文章として意味的まとまりを持っている。理解されるべき意味を伝える言葉の集まりである。
・ 伝える側の意図が、受け取る側で正しく理解されるために、文章と聞き手の間に「教え」が必要。意味を正しく受け継ぐことを、ここでは「伝統の教え」と呼んでいる。
・ ガネーシャという名前と姿形は、自分と自分を取り巻く宇宙の秩序を、それとして正しく認識できるために、ヒンドゥー教の伝統で与えられている。ガネーシャだけでなく、ヒンドゥー教で見られる全ての神々の名前・姿形は、究極的にはこの宇宙の真実の認識のためにある。
・ ヒンドゥー教とは、他の宗教とは違って、信じるものではなく、この世界と自分の事実を正しく認識するためのもの。
・ 始めは「困ったときの神頼み」から入っても、人間としての成長、そして真実の認識へと、次第に導いてくれる。

「祈り」とは?
・「祈る」という動詞の原形から派生した言葉。
・「誰が」「何の為に」「誰に対して」「何を」祈るのか?サンスクリット語文法家・パーニニの教えた普遍文法に沿って考える。
・「誰に対して」祈るのか? 「願う」「頼む」という他の動詞と対比して考察する。
・ 自分が欲しいもの、またはそれ以上のものを持っている相手にしか頼めない。
・ ヒンドゥー教の言うところの「神」と、他の宗教との違い ー 創造における知的要因と物質的要因
・ イーシュヴァラ(ईश्वर [īśvara])、バガヴァーン(भगवान् [bhagavān])、カルマ・パラ・ダーター(कर्मफलदाता [karmaphaladātā])など、ヒンドゥー教に何千・何万・無数にある、神様の名前の全ては、事実を事実として認識できるようになるために、理解されることを意図した、文法的にも解析できる、意味のある言葉。
・ バクタ(भक्त [bhakta])とはーイーシュヴァラを認識している人。視野に入っている人。
・「誰が」祈るのか? バガヴァッド・ギーター第7章から、四段階のバクタについて。
・ 最初の二段階は、バガヴァーンを利用しようとしているだけ。後の二段階は、何者?
・「何を」祈るのか? 人類誰も、自分が本当に欲しいものなど分かっていない。目の前の欲しいものに心を奪われているから。空恐ろしいけど、それが人生の事実。
・ 本当は何が欲しいのか?それを明らかにする考え方。
・ モークシャ(मोक्ष [mokṣa])ー欲しくないものからの完全な自由
・ あらゆる制限から完全に自由な存在があるとしたら、それはたったひとつであり、それは私自身であるはず。それは、自分が体験するもの全ての真実である。
・ もしそうなら、それを「知る」しかない。
・ 三・四段階目のバクタの意味が分かってきた。

知る手段
・ 知る手段と、その対象として知られるもの。その組み合わせを見てみる。
・ 自分とは、その存在を知る手段を必要としない、唯一の存在。
・ しかし、その自分が何者なのか?それを知る手段がない。
・ それなのに、自分にとっての対象物を知るための手段で、自分を知った気になっている。それが全人類が犯している、根本的な間違い。全人類の歴史も苦悩も全て、この無知と混乱に基づいている。
・ ウパニシャッド(उपनिषद् [upaniṣad])という知る手段ーその言葉の文法的成り立ちから、それが何をするものなのかを見ていく。
・ ウパニシャッドの教えていることと、その教え方。「あなたはそれである」という等式。
・ E=mc2のように、等式の解は、両辺が同一であるということ。分かっている人は、両辺の違いは見た目であり本質でないと分かっていること。(←この部分は名古屋ではお話ししきれていません。)等式の理解には、知性の準備が必要。
・ ヴェーダという聖典 ー 聖典とは、人間の幸福に普遍的に寄与するもの。「あなたは罪を背負っている」「この世の終わりが来る」と言って脅したり、改宗しない人間への差別を教え、土着の人々とその文化を破壊し続け、人類を恐怖と不幸に陥れている、世界宗教が拠り所としている聖典とは、定義からして違う。
・ ヴェーダという知る手段の扱う範囲: 経験によって知り得ないこと。オーバーラップしない。(質問コーナーの、哲学・科学・宗教の関係性について参考にしてください。)
・ ヴェーダには、前の部分と後ろの部分(ヴェーダーンタ)という、ふたつの部分があり、ふたつ別の主題を扱っている。その前後関係。ヴェーダの全ては、前の部分は、後の部分を理解するために、知性的・感情的な準備をするためにある。
・ 四つのプルシャ・アルタ

カルマ・ヨーガ
・「どうやって」祈るのか? 三つの行いの手段から:1.मानस-कर्म [mānasa-karma]、2.वाचिक-कर्म [vācika-karma]、3.कायिक-कर्म [kāyika-karma]
・ 祈りの作法: イーシュヴァラに対して、自分のベストを捧げ、お下がりをありがたく受け取る。インドに来て見るべきもの。
・ イーシュヴァラとは、この宇宙から離れていない、物質的そして知的要因であると認識できたら、生きていることそのものが祈りとなる。祈りの作法は、どのようにしてこの世界と関わるのかのお手本。
・ 宇宙との関り方: 1.自分の行動の選択、2.その結果の経験 この二通りのみ。
・ ダルマ(धर्म [dharma]): 行いの選択において、何が適切なのか・不適切なのか、という、普遍的な価値観。これは、人間が作ったものではない。既にこの世界のあり方、人間のあり方として、与えられているもの。ゆえに、イーシュヴァラそのもの。
・ 行動の選択基準: ラーガ・ドヴェーシャか、ダルマか。前者は小さな自分が基準、後者はイーシュヴァラと離れていない大きな自分が基準。
・ プンニャとパーパ(ヴェーダの前の部分、ダルマ)
・ プンニャを得られる行為: ダルマに沿った行い。自分がこの状況ですべき、適切な行い。1.祈り、2.与えること(時間があれば、具体的に何ができるのか、パンチャ・マハー・ヤッグニャについてお話ししたかったです。)
・ 最初のイニシアティブは、この世とあの世でのアルタ・カーマに換えるための私利私欲のためのプンニャを狙っていたとしても、ヴェーダの教えるカルマ(ダルマ)は、他を喜ばせる行いなので、自然と、その人に必要な時間をかけて、心の大きな人(マハートマー)へと成長させてくれる。このように、ヴェーダがダルマとして教える行き方は、どのような人でも、その人のいるところで、成長を促す行き方(way of life)。
・ インドの伝統文化が、全人類に提供している、モークシャまで繋がっている「人生を成長の為に活かす方法」を、是非活用してみてください。

質問コーナー
・ ヴェーダは哲学ですか?宗教ですか? 答えとしてまず、哲学・科学・宗教の定義をし、ヴェーダとヴェーダーンタがそれらの定義にどう当てはまるのか、当てはまらないのかを見ていき、ヴェーダという知る手段とは何かをより明確に理解できるように説明しました。
・ 欲望は理性で押さえないといけない?
・ 瞑想中に雑念が。
・ おでこに白や赤の印をつける意味は?(お答えするのを忘れていました。次の大阪の勉強会に質問者がまたいらっしゃれば、そこでお話しします。)

こうして書き出してみると、たった一日のクラスの中で、かなりの情報量ですね。。しかも、ここに書き切れていないことも沢山あるはずです。
ヴェーダーンタの勉強とは、人生とは何の為にあるのかを明らかにしていくために、腰を据えて、日々の経験を活かしながら、残りの人生をかけて、ゆっくりじっくり続けるものですから、これからも、機会がある度に勉強会に参加して、ヴェーダーンタはもちろん、チャンティングやサンスクリット語文法も学びながら、勉強を続ける足場をしっかり組んで行ってくださいね。

祭壇には、ちょうど運良く、参加者に見えやすく説明しやすいガネーシャの像が、主催者の方によって持って来られていました。

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