2017年7月17日月曜日

ダクシナー、ダーナ、ビクシャー等の言葉の使い分け方

ダクシナー、ダーナ、ビクシャ―、
これらの言葉は、伝統文化の理解において重要なキーワードであり、
単に「参加費」「授業料」「お金を渡すこと」という言葉と置き換えて使えばよい、
というものではありません。

特にダクシナーは、知識の受け渡しという神聖な儀式を完成させるために、
儀式の最後に、知識を受け取った人が、知識を渡した人へ捧げる、
とても神聖な捧げものですから、参加費や寄付とごっちゃにしてはいけません。

ダクシナーとは何か、ダーナとは、ビクシャ―とは何か、
正しく理解することが、受け取った知識の正しい理解にも繋がるので、
理解が深められるよう、説明を試みてみますね。 


ダクシナー

 
・ プージャー、ホーマ等、お祈りの儀式をしてもらったとき、儀式をしてくれた祭司へ、
・ ヴェーダとそれに関する文献の教えを授かった時、先生へ、
儀式や教え(知識を讃える儀式)を完結させるために不可欠な要素のひとつがダクシナーです。
尊敬を表すための、象徴的・儀式的な行為です。 

祭司や先生など、伝統の知識を持っている人に敬意を持って渡すものであり、
代金・料金の支払い、賃金、チップではありません。
自分が雇い主のような態度や、お金をあげてやってる、
という風にならないように気を付けましょう。
 
ダクシナーを渡すタイミングは、お祈りの儀式をしてもらった時は、儀式の終わった後にプージャリ(祭司)さんに渡します。
一方で、それ以外の場合は、グルプールニマーなどの縁起の良い日や、挨拶に行った時、コース修了時など、何かの区切りや特別な機会に、ダクシナーを渡したいと希望する人が、ダクシナーをするのが一般的です。
「参加費」や「お月謝」ではありませんから、クラスごとや月毎に渡す必要は特にありません。(そうしてはいけない、ということもありませんので、結局はそれぞれの先生方のご意向や、生徒各自の考えで決めれば良いことです。)

教えを直接受けたことが無い先生でも、ナマスカーラをする(挨拶をして尊敬を表す)時には、花と果物と共に、ダクシナーも封筒に入れて用意して、お盆や籠に載せて捧げます。

「プージャリさんへのダクシナー」「スワミジへのダクシナー」「~先生へのダクシナー」 と、ダクシナーは、知識を持った特定の人に宛てられるものです。
アシュラムの運営費用は、寄付(ドネーション)によって成り立っていますが、「アシュラムにダクシナーをする」とは言いません。アシュラムに対してするものはドネーションです。
また、ダーナは「自分の義務の範囲の外へ一歩踏み出して与える」という態度ですが、
一方、ダクシナーは「儀式における必要な要素」です。
 
この勉強は、学ぶことを望む人が正しく敬虔な姿勢でアプローチすれば、誰にでも勉強する機会が与えられるべきものです。
経済的な理由で勉強できないということがあってはなりません。
くれぐれも、「ダクシナーが払えないから勉強出来ない」という勘違いの無いように願います。(実際私がインドで教えて来たブランマチャーリン達は殆ど皆一文無しです。)
日本での勉強会では、運営に使われる参加費・宿泊費などの設定は主催者の方々にお任せていますが、それらを主催者に支払うことが困難で、クラスにどうしても参加されたい方は、私に直接ご相談ください。

(ヴェーダーンタの勉強を理由にあまり仕事もしないでダラダラしている人を作りたくないので、大きな声では言いたく無いですが、)
ダクシナーは学びに必要な要素ですが、必ずしもお金という形である必要はありません。
セーヴァーをすることでも代用になります。
実際プージヤ・スワミジは、金銭的なダクシナーができなかった分、先生方へしっかりとセーヴァーをされたと仰っていました。
(先生方へのセーヴァーとは、先生の周りでファンクラブのようにただウロウロしていることではありません。スワミジの場合は機関誌の出版に関わる全てを始め、ヒンドゥー・ダルマに関わる様々なプロジェクトに献身的に努められていました。また、ダクシナーをしたからと言ってセーヴァーをしなくていいということでもありません。スワミジの生徒はとにかく皆さん、セーヴァーをガッツリされます。これがスワミジから受け継がれているヴェーダーンタの生徒としてのスピリッツです。)


ダーナ


自分が与える義務の無い人々に、一歩踏み出して与える行為。

家族を養ったり、社員に給料を与えたり、何かを得た対価を支払ったりするのは、
扶養義務、支払い義務を果たしているだけで、ダーナではありません。

サンスクリット一日一語にも詳しく説明しています。

しなくてもいいところをわざわざ意思を使ってするのがダーナなので、
その点で、ダクシナとダーナは違います。

文献で教えらている方法でダーナをする時は、
それはプンニャを得るための祈りの行為ですから、
儀式と同じように、もらってもらう相手、もらってもらうもの、場所や時間など、
全ては神聖なものであり、与える側の人は、敬虔な態度で臨みます。


ビクシャー


家庭を持っていない、勉強に専念している人、
つまり、サンニャーシンとヴェーダの学生(ブランマチャーリン)に対して、
勉強をし続けてもらうために、食事を提供することを、ビクシャ―と言います。

ビクシャーのスポンサーをすることを、アンナ・ダーナ(食べ物の分配)と言います。

ビクシャーを与えることが出来る、唯一の立場にいるのが、家庭人(グラハスタ)ですから、
キャンプの時など、家庭人でもビクシャ―を体験して食べることは出来ますが、
家庭人までビクシャーを当てに生きるようになると、文化的な社会が崩壊してしまいます。
という点は、スワミジがよく指摘していましたね。


ダーナ、ビクシャー、そして運営費など諸々、
これらを総称して、寄付ということも出来ますね。
 
お礼やプレゼントはそのままの呼称で良いでしょう。

いずれも、消費者から貢献者へという自己成長を後押しする、象徴的なステップです。

日本の寄付に対する感覚に関して一考


日本人の感覚では、寄付という行為は、
「お金を有り余らせている金持ちだけがするもの」
「庶民にはどうせ無理」のような、ちょっと悲しい認識があるようですが、
いつかドネーションをする為のお金があり余る日を待っていたら、
どんなにお金持ちになっても、自己成長するチャンスは一生来ないでしょう。

所得額が問題ではなく、人の為に一歩踏み出したかどうか、それだけです。
一文無しの生活をしている人でも、分け与えることを知っている人は世界中に多くいます。

余ったもの、要らないものをおすそ分けしているのは、不用品を処分しているだけで、
「与える時にはベストなものを」という精神とは違いますね。

自分がやっていると人のことも見えてきますが、
実際にダーナをしている人は皆総じて、
「やろう」と決めて、工面して実現されているものです。

経済状況がまずありき、ではありません。
所得の無いサンニャーシンやブランマチャーリンでも(こそ)ダクシナーやダーナの価値を知っていて実践しています。また、ダクシナーもダーナも、金品である必要はありません。
時間でも、能力や労力でも、自分に与えられているものは、全て誰かの役に立てるものです。
結局は、その人の価値観において優先順位がどうなっているか、だけです。


追記:
最近はダクシナーという言葉が普及してきたせいか、ただ受講料を設定したくない場合に「ダクシナ制」という言葉を使っているのかな?というケースを散見するようになりました。「ダクシナ制」という言葉が独り歩きして、その言葉を使う人の思考を停止しているなら、大切な言葉の濫用になってしまいます。
 
また、
私は寄付やダクシナーを得るために教えているのではありません。
頼まれたから親切で教えているだけですし、ダクシナーも伝統に従って受け取らなければならないので受け取っているだけです。
私個人の場合は、受け取ったダクシナーは基本的に全額寄付していますが、だからと言って、「どこかに寄付されたい方は私にダクシナーをしてください」という訳ではありません。(そうされると私の仕事が増えるだけなので。)
 

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