ヴェーダーンタやサンスクリット語を教えていると、
どうしてもタイトルが「インドの智慧」「インドの伝統」のように、
「インドの~」になりがちですが、
教えている内容は完全にユニヴァーサル(普遍的)な内容です。
「自分がこの宇宙から分離・孤立・対立した存在だ」 と自己認識していて、
そんな自分が受け入れられない自意識を持っている人間という生命体に対してヴェーダは、
「この知的に組み立てられている宇宙の全ては、知識の表れであり、
その宇宙として表れている全知識が存在している意識があなたなのですよ」
という教えを理解するための準備として必要な自由意志の使い方も教えてくれています。
ここから見て分かるように、ヴェーダの教えは、
国籍やジェンダーはもちろん、思想や宗教をも超えた、
全人類、いや、宇宙人にでさえ普遍的なテーマを扱っています。
この宇宙から分離・孤立・対立している小さな自分を補完する為に、
社会的地位や経済的安定、人間関係による承認などを追いかけ続けても、
自分が自分の事を正しく知らない限り、自分は満たされません。
追いかけ続ける過程で、社会も環境も、あらゆる生物と無生物は破壊され続けます。
インドでは、このような知識に対して政治や経済のトップの方々が敬意を払います。
モディ首相が良い例でしょう。スワミジにも会いに来られていました。
スワミジも、人々の手本となる社会のリーダーがこのような知識を持つべきだと、
バガヴァッドギーターを引用して、インドでVIPと呼ばれる人達のための
キャンプ(集中勉強会)を開催されていました。
プージャ・スワミジが去った後、日本で教えるようになっても、
以前と同様、毎日ヴェーダーンタとサンスクリット語を教えながら学び、
「सर्वे भवन्तु सुखिनः(全ての人が幸せでありますように)」と、
世界の平和を祈り続ける生活を続けていて思うのは、
世界のこれからを真剣に考え、想い描き、引率して行く、
未来のあり方に影響力のある人々に、
例えば、ビルゲイツさんや、日本なら落合陽一さんのような方々に、
経済成長や自国ファースト的な思想に収まらない、
もっとトータルなヴィジョンを持って活躍してもらう為にも、
この知識を知ってもらいたい、ということです。
トータルなヴィジョンとは、この宇宙の全てという仕組みの中で、
人間として何を得るべきなのか、与えられたものをどう活用するべきなのか、
人間の根本的な問題と、それへの根本的な解決、
という普遍的で包括的なヴィジョンです。
「インドの~」と言った途端、インドに興味のない人は去って行ってしまうので、
上に書いたような、普遍的なテーマに集中して議論を進める本を書いてみたくなり、
同志の方々に手伝ってもらいながら、ゆっくりと進めています。
本を読んだだけで理解できるものではありませんが、話を聴こうと思うきっかけとして。
内容はユニヴァーサルだけど、それがインドの伝統文化の中で教え継がれているので、
やっぱり、きちんと学ぶには、インドの伝統的な学ぶ環境が必要になります。
世界のより良い未来を自分事として考えていることを常としている、
論理的思考能力に恵まれていて、行動力もある人なら、
インドで2週間くらいのキャンプに(ちゃんと)参加出来たら、
しっかり地に足の着いたトータルなヴィジョンを持って帰ってもらえると思います。
(プージャ・スワミジも、全体像をコミュニケートするのに最低限それ位あれば、
といったようなことを以前キャンプで仰っていました。)
日本ではまだまだ、先入観のせいか、「インドの哲学」や「ヨーガのゴール」のように、
「インド」や「ヨーガ」という狭い枠組みの中にヴェーダーンタを当てはめようとしてしまっているのでは?という傾向が強いですが、そうしているうちはヴェーダーンタをちゃんんと理解できません。
ちなみに「ヒンドゥー教」と言って、他の宗教と横並びにしている人も、
インド人でもそれが普通な位に普通にいますが、ヴェーダの教えをその枠組みに当てはめようとしているうちは、きちんとした理解は絶対に無理ですね。「ヒンドゥー教は宗教ではない」と言われる所以です。
あとついでに、ヴェーダの知識をきちんと学ばずに、”先進国”の価値観押しつけで、
インドで支援、協力、慈善活動をするのは、お金をばら撒く以外に誰の役にも立ちません。
そしてもうひとつついでに言っておくと、
インド社会が問題だらけなのは、本人たちのヴェーダの知識の無理解によるものです。
まずインド人にしっかり学んで欲しい。だから私はインド人にサンスクリット語文法を教え、彼らに自分達の文化に誇りを持ってもらい、理解を深めてもらうことが、
自分の役割だと思っています。
話を本筋に戻して、
「インド」や「ヒンドゥー教」や「ヨーガ」などの条件に拘わらず、
幸せを求めている全ての人に、そして多くの人々を良い方向へ導ける、
普遍的でトータルなヴィジョンを探求している影響力のあるリーダーの方々に、
ヴェーダのヴィジョンが伝わりますように。
既にヴェーダーンタを勉強している方々にも、先入観にとらわれず、
今勉強していることは、インド的な趣味やヨーガに限定されたものではなく、
全世界に普遍的なことなんだよ、という明確な理解と自覚を持って、
同じ思いを共有していただきたいなと思っています。
ナヴァラートリーの夜に、女神に祈りを捧げながら。。
リシケシのアシュラムにて、私の編んだナンディ―のお召し物に、 スワミジが気づいてくれた時の写真。 |